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予期し得ない事象に遭遇した場合の対応時間の取扱い(例外的な取扱い)

ここでは、令和6年4月から新規に施行された、例外的な取扱いである、
 
「予期し得ない事象に遭遇した場合の対応時間の取扱い」
 
についてご紹介いたします。

予期し得ない事象への
対応時間の取扱い

事故、故障、災害等、通常予期し得ない事象(厚生労働省労働基準局長が定めるもの)に遭遇し、一定の遅延が生じた場合には、客観的な記録が認められる場合に限り、1日の拘束時間運転時間(2日平均)連続運転時間の規制の適用に当たっては、その対応に要した時間を除くことができることとする。

勤務終了後は、通常通りの休息期間を与えるものとする。

厚生労働省労働基準局長が定める具体的な事由

  1. 運転中に乗務している車両が予期せず故障した場合
  2. 運転中に予期せず乗船予定のフェリーが欠航した場合
  3. 運転中に災害や事故の発生に伴い、道路が封鎖された場合、道路が渋滞した場合
  4. 異常気象(警報発表時)に遭遇し、運転中に正常な運行が困難となった場合

予期し得ない事象に遭遇した場合について

新設された経緯

これは、従来から設けられていた「緊急輸送・危険物輸送」(適用除外対象業務)に関する改善基準告示の適用除外とは別に、新たに設けられた規定です。

EU諸国でも、このような例外的な取扱いが定められており、今回の規定はそれらを参考にしたものとされています。

また、バス事業及びタクシー事業についても、同様の規定が新設されています。

「通常予期し得ない事象(厚生労働省労働基準局長が定めるもの)」について

まず、「厚生労働省労働基準局長が定める通常予期し得ない事象」は、上記1~4に限定されています。「これに準ずる事由」といった包括的な定めは設けられておらず、対象はあくまで客観的かつ限定的な事象に限られています。

また、「当該事象は、通常予期し得ないものである必要があり、例えば、平常時の交通状況から事前に発生を予測することが可能な道路渋滞等は、これに該当しない」とされています。

さらに、上記の「厚生労働省労働基準局長が定める具体的な事由」を見ると、いずれも「運転中に」との文言が用いられています。この点からも、本規定が、運転前には予期し得ない事象に限定して適用されることを示しているといえます。

なお、これについては、「荷主都合によるやむを得ない遅延も含めるべきではないか」といった意見もあったようです。しかし、荷主都合等の人為的事情まで含めると、対象範囲が不明確となるおそれがあります。そのため、客観的な事由に限定する整理が採られたものと考えられます。

「通常予期し得ない事象への対応時間」に該当・不該当の例

例えば、

  • 車両が故障したため、急遽、別の運転者が交替して別の車両を運転した場合、この交替した運転者については、不該当となります。
  • フェリーが欠航したため、フェリー駐車場で待機した時間については、これは該当することになります。
  • フェリーが欠航したため、急遽、陸路で移動した場合、陸路での移動時間が、フェリー乗船時間と同程度である等、陸路への変更が合理的であれば、この陸路移動時間は該当し得る
  • 災害・事故での道路封鎖・渋滞では、イベント等での自然渋滞、帰省ラッシュでの渋滞とかは不該当
  • 災害・事故での道路封鎖・渋滞で、同乗者の急病への対応時間、犯罪に巻込まれての警察等への対応時間、といった場合は、車両を停車せざるを得ず、道路の封鎖または渋滞につながる、として該当する
  • 異常気象に遭遇した場合でも、警報が発表されていない場合は、不該当

こういった例が挙げられています。

「客観的な記録」として認められるには

​次に、「客観的な記録が認められる場合」としては、次の1、2のいずれの記録も必要とされています。

1.運転日報上の記録として、

  • 対応を行った場所
  • 予期し得ない事象に係る具体的事由
  • 当該事象への対応を開始し、及び終了した時刻や所要時間

2.予期し得ない事象の発生を特定できる客観的資料として、事象に応じて例えば、

  • 修理会社等が発行する故障車両の修理明細書等
  • フェリー運航会社等のホームページに記載されたフェリー欠航情報の写し
  • 公益財団法人日本道路交通情報センター等のホームページに掲載された道路交通情報の写し(渋滞の日時・原因を特定できるもの)
  • 気象庁のホームページ等に掲載された異常気象に関する気象情報等の写し

このような記録や資料も適宜整備し、運転日報とあわせて綴じて保管しておく、といった対応が想定されます。

なお、「ホームページの写し」とありますが、これは、プリントスクリーンによるハードコピーで足りるものと考えられます。

「客観的な記録」が得られない場合の対応

上記の「客観的資料」については、ホームページの写し等を入手できない場合もあり得ます。

そのような場合には、運転日報に可能な限り詳細な内容を記載することにより、対応が認められる場合もあるようです。具体的には、

  • 災害や渋滞等に巻き込まれた区間
  • 該当する時間帯

その他関連する事情など、できるだけ多くの情報を運転日報に記載しておく必要があります。

なお、これはあくまで「やむを得ず客観的な記録が得られない場合」の措置ですので、この方法を常態化させることは適切ではないと考えられます。

除外できる時間

それから、「除外できる時間」の取扱いについては、特に注意が必要です。

予期し得ない事象への対応に要した時間は、「1日の拘束時間」「2日平均1日当たりの運転時間」「連続運転時間」についてのみ除外することができます。一方で、「1か月の拘束時間」「年間の拘束時間」「2週平均1週間当たりの運転時間」については、除外することができません。

したがって、例えば月末や締日直前に「予期し得ない事象」が発生した場合には、1か月の拘束時間が限度を超過する可能性もあります。

この点に関し、Q&Aでは「余裕を持った運行計画を毎月作成することが望ましいです。」と記載されています。しかし、「予期し得ない事象」である以上、実際にどの程度の余裕を持たせれば足りるのかは、必ずしも明確ではありません。

そのため、このような事象に遭遇した場合には、後日の確認に備え、できる限り詳細な記録を残しておくことが重要といえます。

休息期間

休息期間については、予期し得ない事象に遭遇した場合であっても、通常どおり確保する必要があります。すなわち、

勤務終了後、継続11時間以上休息期間を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らない

通常の休息期間を与えなければなりません。

したがって、予期し得ない事象に遭遇した翌日に早朝からの運行が予定されており、9時間以上の間隔を確保できないような場合には、翌日の運行を代替要員に引き継ぐ、又は荷主と調整のうえ出発時刻を後ろ倒しにしてもらうといった対応が必要になることも考えられます。

賃金についての注意点

予期し得ない事象への対応時間に係る賃金、つまり、労働時間として扱うべきかについては、「予期し得ない事象への対応時間は、休憩に該当しない限り、労働時間として取り扱う必要があることはいうまでもない。」とされています。

そのため、当該時間が休憩時間に当たらない限り、労働時間または時間外労働として処理する必要があり、当然に賃金支払の対象となります。

見落としやすい点でもありますので、注意しておきたいところです。

ご参考までに、上部にQ&Aの該当ページ抜粋へのリンクを掲載しております。あわせてご確認ください。

村上直己社会保険労務士事務所の
村上直己です。
最適な解決策を考えてまいりましょう。​

こうした取扱いは、頻繁に問題となるものではないかもしれませんが、実際に該当場面が生じた際には、会社としての判断力と事前の備えが問われます。対応を誤ると、労務管理や監査対応の面でも不安が残ることになりかねません。

また、この取扱いは、あらかじめ予期できるものについては対象外とされています。例えば、天気予報により大雪や台風が事前に予測できている場合には、例外的な取扱いに該当しない可能性があります。実務上は、「これは対象になるのか」『「のように記録を残せばよいのか」と判断に迷う場面も少なくないでしょう。

そのようなときこそ、制度の理解だけでなく、自社の実務に合わせた運用整理が重要です。

当事務所では、改善基準告示への対応、就業規則・各種協定の見直し、日々の労務管理のご相談まで、運送業の実情を踏まえてサポートしております。少しでも不安な点がございましたら、どうぞお早めにお電話またはお問い合わせフォームよりご相談ください。

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