
トラック・バス・タクシー運送業の労務管理、就業規則は熊本の社労士
社会保険労務士村上直己事務所
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288時間を超えないものとする。
自動車運転の業務については、令和6年4月から時間外労働の上限規制が適用され、特別条項付き36協定を締結する場合であっても、年間の時間外労働は960時間以内(休日労働含まず)とされました。
この年960時間という上限を前提に、改善基準告示上の「拘束時間」へどのように反映させるか。これが、改正内容を理解するうえでの出発点の一つといえます。
タクシー運転者の日勤勤務については、改正前の1か月299時間以内から、改正後は1か月288時間以内となり、月11時間の短縮となりました。
もっとも、「1か月の拘束時間を何時間に設定するか」という点については、年960時間規制との関係、休憩時間の取扱い、実際の勤務実態、運行継続への影響など、さまざまな観点から検討が行われた部分です。
そのため、現時点で実務対応を考える場合には、単に上限時間だけを見るのではなく、36協定、勤務割、休息期間、賃金計算などを含めて、全体として無理のない管理体制を整えていくことが重要になります。
1か月の拘束時間が、どのような計算に基づいて「288時間」とされたのかについて、労働時間、休憩時間、時間外労働、休日労働に分けて整理してみたいと思います。
もちろん、勤務形態や所定労働日数、休憩時間の設定によって、実際の計算は事業場ごとに異なります。ここでは、あくまで標準的な考え方として、288時間の計算根拠を確認していきます。
まず、1か月の労働時間についてです。
8時間 × 21.75日 = 174時間
次に、休憩時間です。
1時間 × 21日 = 21時間
となります。
この労働時間と休憩時間を合計すると、
174時間(労働時間)+21時間(休憩時間)=195時間
となり、この195時間が、時間外労働や休日労働が発生しない範囲での、1か月の標準的な拘束時間の目安といえます。
なお、厚生労働省の資料でも、1か月の法定労働時間と休憩時間の平均について、年間の法定労働時間2,080時間と年間休憩時間260時間を合計し、12か月で割ることで、1か月当たり195時間という考え方が示されています。ただし、この数値は、所定労働日数や休憩時間の設定によって異なるため、あくまで「目安」とされています。
では、時間外労働についてです。
960時間 ÷ 12か月 = 80時間
となります。
さらに、休日労働については、
13時間
となります。
以上を合計すると、次のようになります。
174時間(労働時間)+21時間(休憩時間)+80時間(時間外労働)+13時間(休日労働)
=288時間
このように整理すると、タクシー運転者の日勤勤務における「1か月288時間」という拘束時間は、標準的な労働時間・休憩時間に、年960時間の時間外労働を月換算した80時間と、休日労働1回分を加えたものとして理解することができます。
なお、現時点で実務対応を考える場合には、「288時間以内に収まっているか」だけでなく、1日の拘束時間、休息期間、休日労働、36協定、歩合給を含む賃金計算まで含めて、全体として整合性のある労務管理を行うことが重要です。
1日についての拘束時間は、13時間を超えない。最大拘束時間は15時間。
14時間を超える回数をできるだけ少なくするよう努める。(「1週間について3回以内」を目安とする。)
1日の拘束時間は、休息期間と表裏一体の関係にあります。
タクシー運転者の日勤勤務については、現在は、1日の拘束時間は次のように整理されています。
1日の拘束時間を原則13時間以内とする点は、従前と同様です。
一方で、「14時間を超える回数を1週間について3回以内を目安とする」という考え方は、タクシー事業では改正後に明確化された部分といえます。
ご参考までに、バス事業についても、1日の拘束時間は原則13時間以内、延長する場合の上限は15時間以内とされており、14時間を超える回数については、週3回までが目安とされています。
これに対し、トラック事業では、14時間を超える回数は週2回までが目安とされています。なお、トラックについては、一定の長距離貨物運送に該当する場合には、1週につき2回に限り最大拘束時間を16時間とすることができる特例も設けられています。
以上より、タクシー事業においては、「15時間以内であれば問題ない」と考えるのではなく、14時間を超える勤務が週3回以内を目安に抑えられているか、さらに、その回数をできるだけ少なくする勤務割となっているかを確認していくことが重要です。タクシーの日勤勤務について、厚生労働省の資料でも、14時間超は週3回までが目安であり、14時間を超える日が連続することは望ましくないとされています。
勤務終了後、継続11時間以上の休息期間を与えるよう努めることを基本とし、継続9時間を下回らない。
改正後の改善基準告示では、タクシー運転者の日勤勤務について、勤務終了後の休息期間を「継続11時間以上与えるよう努めることを基本とし、9時間を下回らないものとする」とされています。
そして、拘束時間については、タクシーの日勤勤務では、1日の拘束時間の上限が原則13時間、延長する場合でも最大15時間とされており、休息期間についても、この考え方とあわせて管理することになります。
この「継続11時間以上を基本とし、下限を9時間とする」という表現は、少し変則的な書きぶりに見えます。
通常であれば、「原則○時間、例外○時間」と整理したくなるところですが、あえて「継続11時間以上」を先に掲げ、そのうえで「9時間を下回らない」としている点に特徴があります。
この背景には、運転者の睡眠時間の確保、疲労回復、健康確保を重視する考え方があります。
勤務間インターバル制度(=休息期間)は、終業時刻から次の始業時刻までに一定の休息時間を設ける制度であり、十分な睡眠時間や生活時間を確保するために重要な仕組みとされています。
また、EUの労働時間指令では、24時間ごとに最低11時間の連続した休息期間を確保することが基本とされています。このような考え方も参考にしながら、日本の改善基準告示でも、11時間以上の休息期間を確保する方向性が強く意識されたものと考えられます。
もっとも、タクシー業務では、泥酔者対応も含めた利用者の状況、道路交通の状況、事故・渋滞への対応など、事業者や運転者の努力だけでは予定どおりに終業できない場面も想定されます。
仮に「休息期間11時間を原則とし、例外的に週3回まで9時間を認める」といった厳格な仕組みにした場合、現場の実態に合わず、やむを得ない事情によって基準違反が生じやすくなるおそれもあります。
そのため、最終的には、11時間以上の休息期間を確保することを基本的な方向性として示しつつ、最低限確保すべき下限として9時間を定める形になったものと考えられます。
つまり、改正後の休息期間については、「9時間さえ確保すればよい」という理解ではなく、「11時間以上の確保を基本として勤務割を組み、それでもやむを得ない場合に9時間を下限として管理する」と捉えることが重要です。
なお、この「継続11時間以上を基本とし、9時間を下回らない」という考え方は、タクシーだけでなく、トラック・バスの改善基準告示にも共通して見られます。ただし、トラックについては宿泊を伴う長距離貨物運送などの特例もあるため、実際の運用では、業態や勤務形態ごとに個別の確認が必要です。
特に地方部において、日勤勤務と隔日勤務を組み合わせた勤務割が行われている実態もあるかと思われます。
例えば、「日勤、日勤、日勤、隔日勤務、公休」といった勤務割です。
もっとも、日勤勤務と隔日勤務では、勤務時間帯、生活リズム、睡眠時間の取り方が大きく異なります。そのため、日勤勤務と隔日勤務を頻繁に切り替える勤務割については、運転者への身体的・精神的な負担の面から、慎重な管理が必要となります。
この点、日勤勤務と隔日勤務を併用する場合には、制度的に一定期間ごとに交替させるよう勤務割を編成することとされています。また、厚生労働省のQ&A集では、日勤勤務と隔日勤務を併用して頻繁に勤務態様を変えることは、労働者への生理的影響を踏まえ、原則として認められないものと整理されています。
例えば、「今月は日勤勤務、来月は隔日勤務」といったように、一定期間ごとに勤務態様を切り替える勤務割であれば、比較的整理しやすいと考えられます。
一方で、「日勤、日勤、日勤、隔日勤務、公休」といったように、短い周期で日勤勤務と隔日勤務を混在させる場合には、厚生労働省のQ&A集で示されている要件を満たしているか、個別に確認する必要があります。
具体的には、次の点が必要とされています。
特に注意したいのは、日勤勤務が含まれているからといって、単純に日勤勤務の1か月288時間の枠で管理すればよいわけではない、という点です。日勤勤務と隔日勤務を混在させる場合には、隔日勤務の1か月262時間の範囲内で収まっているかどうかが重要になります。
タクシー事業では、地域の実情や人員体制により、日勤勤務と隔日勤務を組み合わせた勤務割が必要となる場面もあるかと思われます。しかし、現時点では、勤務割の柔軟性だけでなく、拘束時間、休息期間、休日労働の回数を含めた総合的な確認がより重要になっています。
勤務割を作成する際には、単に人員配置上の都合だけで組むのではなく、改善基準告示上の要件を満たしているか、あらかじめ確認しておくことが大切です。
村上直己社会保険労務士事務所の
村上直己です。
最適な解決策を考えてまいりましょう。
現在では、1日の拘束時間が14時間を超える回数について、努力義務ではありますが、一定の目安が設けられています。
そのため、単に1日の拘束時間が上限内に収まっているかを確認するだけでなく、14時間を超える勤務が1週間に何回あるのか、その回数管理も重要になります。
実際の勤務割では、人員体制、運行状況、利用者対応などにより、どうしても長時間の拘束となる日が出てくることもあります。しかし、その回数まで意識した管理が求められるため、従来以上に勤務表や時間管理の見直しが必要となる場面も考えられます。
「どのように勤務割を組めばよいのか」「今の管理方法で問題がないのか」といったお悩みがありましたら、当事務所までお気軽にご相談ください。
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