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歩合給と割増賃金の注意点

ここでは、
 
①累進歩合制と積算歩合制
②歩合給の割増賃金
 
につき、順に見てゆきます。

①累進歩合制と積算歩合制

累進歩合制度については廃止しなければなりません。

累進歩合制と積算歩合制の違いと計算例

タクシー事業では、賃金制度として歩合制を採用している事業場も多いかと思います。

しかし、一口に歩合給といっても、計算方法にはいくつかの種類があります。その中でも、特に注意が必要なのが「累進歩合制」です。

累進歩合制については、上記の「タクシー運転者の最低賃金について(リーフレット)」の中でも、次のように記載されています。

”累進歩合制度(トップ賞や奨励加給を含む。)は、長時間労働やスピード違反を極端に誘発するおそれがあり、交通事故の発生も懸念されることから、廃止してください。”

これは、歩合率が変わる境目で、どうしても賃金額に「段差」が生じます。

それで、例えば「あと少し売上を伸ばせば、上のランクの歩合率が適用される」という場合、運転者が無理をして売上を伸ばそうとしてしまう可能性があります。

その結果、長時間労働、スピード違反、信号無視などを誘発し、ひいては交通事故につながることも懸念されます。

このような理由から、累進歩合制については、廃止が求められているものといえます。

一方、積算歩合制では、売上額の区分ごとに歩合率を分けて計算します。

そのため、累進歩合制のように、一定の売上額を超えた途端に歩合給が大きく増える、という段差は生じない仕組みです。

では、累進歩合制と積算歩合制では、どのように計算が異なるのでしょうか。

以下、具体的な例で確認してみます。

前提として、次のような歩合率を設定したとします。

  • 売上額20万円以下の部分:歩合率30%
  • 売上額20万円超30万円以下の部分:歩合率40%
  • 売上額30万円超の部分:歩合率50%

この場合に実際の売上額が40万円だったとすると、大変大まかな例ですが、この場合の計算は次のようになります。

【累進歩合制の場合】

累進歩合制では、実際の売上額が属する区分の歩合率を、売上額全体に適用します。

今回の売上額は40万円ですので、「30万円超」の区分に該当します。そのため歩合率は50%となり、

40万円 × 50% = 20万円

したがって、歩合給は20万円となります。

【積算歩合制の場合】

一方、積算歩合制では、売上額を区分ごとに分け、それぞれの区分に応じた歩合率を適用します。

まず、20万円以下の部分については、

20万円 × 30% = 6万円

となります。

次に、20万円超30万円以下の部分については、すでに20万円以下の部分は計算済みですので、

30万円 - 20万円 = 10万円

この10万円について、歩合率40%を適用します。

10万円 × 40% = 4万円

最後に、30万円を超える部分については、すでに20万円以下の部分と30万円以下の部分は計算済みですので、

40万円 - 30万円 (20万円+10万円)= 10万円

この10万円について、歩合率50%を適用します。

10万円 × 50% = 5万円

したがって、積算歩合制による歩合給は、上の結果の合計となり、

6万円 + 4万円 + 5万円 = 15万円

となります。

このように、同じ売上額40万円であっても、累進歩合制では20万円、積算歩合制では15万円となり、計算結果に差が生じます。

積算歩合制は、累進歩合制と比べると計算は複雑になります。

しかし、歩合率の境目で賃金額が急激に増えるという段差が生じず、運転者に無理な売上追求を促しにくい仕組みであるといえます。

②歩合給の割増賃金

時間外労働・休日労働が生じた場合には、歩合給の部分にも割増賃金は発生します。

固定給+歩合給制における割増賃金の計算方法

上記リンクの「タクシー運転者の最低賃金について(リーフレット)」にも具体例が掲載されていますが、歩合給についても、時間外労働等が発生した場合には割増賃金の計算が必要になります。

この点について、時間外労働や休日労働が発生した場合、固定給部分には割増賃金が発生するものの、歩合給部分については割増賃金は発生しない、と考えられている事業者様も少なくないように思われます。

しかし、歩合給についても、割増賃金の計算対象となります。

タクシー事業における一般的な給与計算の構造としては、固定給と歩合給を組み合わせた制度になっていることが多いかと思います。

例えば、次のような計算方法です。

  1. 売上額に歩合率をかけて、歩合給を算出する
  2. 算出された歩合給から、固定給を差し引く
  3. 差し引いた後の歩合給を、固定給に上乗せする
  4. 歩合給が固定給を下回る場合には、固定給を保証する

このような計算方法を採用している事業場も多いのではないでしょうか。

なお、固定給は、各都道府県の最低賃金をもとに設定している場合が多いかと思われます。

「タクシー運転者の最低賃金について(リーフレット)」の具体例では、「賃金が固定給+歩合給制の場合」として、次のような前提が示されています。

  • 固定給:85,000円
  • 歩合給:56,000円
  • 月所定労働時間:170時間
  • 月総労働時間:200時間(時間外労働を含む)
  • 時間外労働:30時間

ここでは深夜労働の計算は省略し、時間外割増賃金に絞って確認します。

【固定給部分に対する時間外割増賃金】

  • 固定給部分については、固定給を月所定労働時間で割り、1時間当たりの単価を算出します。そのうえで、時間外労働の30時間については、割増率1.25を乗じて計算します。

85,000円 ÷ 170時間 × 1.25 × 30時間 = 18,750円

したがって、固定給部分に対する時間外割増賃金は、18,750円となります。

【歩合給部分に対する時間外割増賃金】

一方、歩合給部分については、固定給部分とは計算方法が異なります。

  • 歩合給は、時間外労働を含めた総労働時間によって得られたものと考えます。そのため、歩合給を月所定労働時間ではなく、時間外労働を含めた月総労働時間で割って、1時間当たりの単価を算出します。この例では、月総労働時間は200時間です。
  • また、歩合給については、通常の労働時間分の賃金、つまり「1」の部分はすでに歩合給の中に含まれていると考えます。そのため、時間外労働に対して追加で支払う必要があるのは、割増部分である「0.25」の部分となります。

56,000円 ÷ 200時間 × 0.25 × 30時間 = 2,100円

したがって、歩合給部分に対する時間外割増賃金は、2,100円となります。

このように、固定給+歩合給制の場合には、固定給部分と歩合給部分を区分して、それぞれ割増賃金を計算する必要があります。

固定給部分については、月所定労働時間をもとに計算します。一方、歩合給部分については、時間外労働を含めた月総労働時間をもとに計算し、割増率についても「1.25」ではなく「0.25」を用いる点に注意が必要です。

歩合給を採用している場合であっても、時間外労働等が発生している場合には、歩合給部分についての割増賃金計算を忘れないようにする必要があります。

村上直己社会保険労務士事務所の
村上直己です。
最適な解決策を考えてまいりましょう。

タクシー事業では、固定給と歩合給を組み合わせた賃金制度を採用している事業場も多いかと思います。

しかし、歩合給については、累進歩合制と積算歩合制の違い、さらに時間外労働が発生した場合の割増賃金計算など、注意すべき点が少なくありません。

特に、累進歩合制は、長時間労働やスピード違反を誘発するおそれがあるとして、廃止が求められている制度です。一方、積算歩合制であっても、区分ごとの計算が必要となるため、給与計算はやや複雑になります。

また、「歩合給には時間外割増賃金は不要」と誤解されているケースもありますが、歩合給部分についても、時間外労働等が発生した場合には、固定給部分とは別に割増賃金の計算が必要です。

賃金制度や給与計算に不備があると、未払賃金や労務トラブルにつながるおそれがあります。

当事務所では、タクシー事業における歩合給制度、割増賃金計算、賃金規程の見直しについて、実務に沿ったサポートを行っております。

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